古市憲寿『僕たちの前途』を読んだ

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古市憲寿さんのことを書くのは難しい。
まず、どの三人称を選ぶか。古市さん、古市くん、古市氏、ポエくん。同じ大学の、1学年下ということは後輩なんだけど、口を聞いたこともないし、社会学者としてメディアに引っ張りだこだし、普通に考えたら他人だ。完全に他人。だから古市さんが正解だと思う。

でも僕は「SFC」とう特殊装置の中で、同時期に学生生活を過ごした彼を赤の他人だとは思えない。
彼のブログも愛読していたし、実はコメント欄で少しだけ絡んだこともある。同じテーマの授業に出たことも多分ある。同じ男性なわけだし古市くんで良いんじゃないかと思う(だから、これからは古市くんと記述しますね)。
線引きするとしたら「有名人」か「無名人」か、と言うところだろうし。

いや、もう1つ。古市くんは起業していて、僕は起業していない。本ブログで取り挙げる『僕たちの前途』は、起業家論をテーマにした作品だ。『希望難民ご一行様』、『絶望の国の幸福な若者たち』で若者論を書いた古市くんが、若者を切り口にしつつ、「働く」という行為に舵を切った作品ということで、友人として大変興味を持ったのだ。

本書で言及されているように、日本では「起業」に対するイメージが偏っているように感じる。
起業は成功や失敗と表裏一体。成功者はジョブズやゲイツ、ザッガーバーグのようなアメリカITの雄が思い浮かぶし、日本でもグリー田中社長や、サイバーエージェント藤田社長のように、若くして起業し、名を知られた人たちが連想される。あるいは松下電器の松下幸之助や、ホンダの本田宗一郎などレジェンド経営者。

いずれの経営者に共通しているのは、みなお金持ちであるということだ。
起業で成功した人は、巨万の富を得られる。そういうイメージがある。若き起業家を羨望の眼差しで見る人もいれば、失敗すれば良いのにと嫉妬を抱くこともあるだろう。お金にまみれた感じ、何となくイメージしていただけるのではないか。

起業家をつぶさに見ると、「何か社会にインパクトのある事業をやってみよう」とか「困った人を助ける製品を作りたい」とか、健全な人もいる。
あるいは、「会社という組織に囚われたくない」とか「信頼できる仲間と楽しくやっていきたい」とか、ちょっと中二病のような理由で起業という選択をする人もいる。
肌感覚として、こういう人は周りに理解されづらい。年配の人には呆れられることもある。「バカヤロー、働くってのは好きなことをやるんじゃねーんだよ!」。ひと昔前なら、親父のゲンコツが飛んできそうなものである。

本書はたぶん、起業している人間にとってはわりに共感できることが多いと思う。あるいは、「何を当たり前のことを」と感じる人も多いのではないか。しかしながら起業をしていない人、志したことがない人にとっては奇異に映るかもしれない。
働くことでストレスを溜めるなんて致し方ない、なのに本書で紹介されている起業家たちは明るく、オープンで、ストレスとは無縁だ。金に溺れていることもなく、何だか爽やかな青年たちである。

何が正しいのか、僕が結論付ける気は毛頭ないけれど、古市くんの視点は面白いぜってことだけは自信を持って言えます。
メディアに出ることも増えた古市くんだけど、それなりにリサーチをしてるし、それなりに取材しているし、然るべき場所で時代を掴もうとしている。ただのチャラチャラした若者では全然ないと思うわけです。

まだ読んでいないけれど、新作は『誰も戦争を教えてくれなかった』。
爽やかな若者が選んだのが「戦争論」ですか、、古市くん。Twitter見ると北欧に飛んでたりしてるみたいだし、次は社会保障論とかかな。古市くんの興味・関心を道標、あるいは反面教師にして、ちょっと引いた視点で社会を見つめるのも、きっと面白い。

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