漫才の歴史が変わったウーマンラッシュアワーの凄さ

(ネタバレ注意)

年末の風物詩と言えば、その年の最高の漫才師を決める賞レース。
2001年から10年の歴史を刻んだM-1グランプリ。その後継番組として2011年から始まったTHE MANZAI。僕は2002年から毎年観続けて、幾度となく爆笑され、時には感動さえしてきた。

結成10年の漫才師しか出られなかったM-1グランプリと異なり、THE MANZAIは結成年に関して縛りはない。中川家や博多・華丸大吉、2丁拳銃、シャンプーハットなどベテラン勢も参加する。若手だけが参加したM-1グランプリでは、その時流に沿ったタイプの漫才がどうしても目立った(そこに差異を見出す漫才が優勝を攫っていた)。

けれどTHE MANZAIは漫才の種類にもバリエーションが出てくる。
おぎやはぎの影響を受けたような緩い漫才を見せる風藤松原。アカデミックな匂いのぷんぷんする学天則。変化球のレイザーラモン。ビートたけしへのリスペクトを感じさせる東京ダイナマイト。直球勝負のスピード漫才・NON STYLE。横綱相撲の千鳥。今年は特に、その多様さに舌を巻いた。1票も入らなかったレイザーラモンも学天則も、おそらく普段から劇場を沸かせているような熱を感じることができた。凄かった、今年は、どの漫才コンビも。

その中で群を抜いていたのが、オジンオズボーンとウーマンラッシュアワー。特に、構成力が素晴らしかった。残念ながら激戦区のAグループで涙を飲んだオジンオズボーンの漫才を、ビートたけしは以下のように評した。

えー、すごいねえ。もう計算通りだねえ。今ね。ネタフリからオチまで。見事に変えていって、見事につくったね、このネタ。

これ、漫才師にとっては最高の評価だったと思う。
いかに精巧なネタを作っても、どこかでズレが生じてしまうもの。オジンオズボーンのようなぶっ飛んだ漫才をするコンビは、客と漫才師の間で溝が生まれそうなものを。見事だった。

それを上回った千鳥。紙一重だった。大悟の奇想天外の発想に加え、近年ツッコミのノブの力量が増している。バラエティ番組への出演も増え、言葉に厚みが出てきた。味・・・。出演者の中で、ツッコミのレベルはダントツで高かったと思う。

そして、タイトルのウーマンンラッシュアワー。

天才・島田紳助に「大阪に帰ってきたときに、テレビでたまたま彼らの漫才の後半2分のみを見たが、その2分はM-1の決勝で見たら93、4点は付けていた」と言わしめた。2010年でさえその評価だったが、年々着実に力を付けてきたのだと思う。

細かくネタを挟みつつ、圧倒的なスピードで「4分」に収めることのできる破壊力。その上手さは毎度感心するのだけど、今回は2本のネタが有機的に絡み合った。特に2本目。「ああ、1本目と同じやん」とガッカリした視聴者も多かったことだろう。だが後半、その様相をガラリと変えてみせる。ツッコミの中川を悪役に仕立てたボケ・村本。見え透いた好感度UPを目論んでいたはずの村本が、一気に超〜嫌な奴になってみせる。ネタの最後には「離婚しろ!」と暴言。ただ喧嘩しているだけに見えるのだけど、たぶん二人の風貌が爽やかだからだろう(≒「怖くない」という意味)。客は怖がらず、たぶん爆笑のままにネタを見終えた。

ギャップを作る構成力。オジンオズボーンと同様、計画通りのネタ運びだったように思う。爆笑のポイントが一つもズレていない。それどころか、要所、要所の笑いの量さえ計算尽くだったはずだ。

決勝の各グループを勝ち上がったのは、千鳥、ウーマンンラッシュアワー、NON STYLE。スピード勝負のウーマンンラッシュアワーとNON STYLEが勝ち上がったので、千鳥に勝機が出てきたかなと思っていた。それくらい、どのコンビも拮抗した良いネタだったし、それくらいでしか勝ち負けを分けるものがないなと思ったのだ。

しかし、結果はウーマンンラッシュアワーが制した。昨年のハマカーンもそうだったけれど、M-1グランプリの決勝に進出しなかった漫才師だ。何となく長く漫才に触れていると、「あ、このコンビ、●●に影響受けてるんじゃないか?」と思うことがある。でも、ウーマンンラッシュアワーは誰に影響を受けているのか分からない。大雑把に言えば、ボケを連射するNON STYLEやナイツと同様の種類なのは間違いないのだけど、それを爆笑に持っていくテクニック、構成力は比類ない。

今日をもって、漫才の歴史が変わった。

若き漫才師は、たぶんウーマンンラッシュアワーのネタを参考にするようになるだろう。
ギターの速弾きのように、漫才のスピードは練習すれば上げることはできると思う。しかし、どこで何をぶっ込むかを決める勇気は、誰しも真似できるものではない。上から目線な漫才評論家を気取る私ですが、そんなヒネクレ者の私をもっと笑わせてくれることを期待しています。また来年。年始のR-1ぐらんぷりも楽しみっす。

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