代田昭久『校長という仕事』読了

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僕が教育系の仕事を始めて、早いもので1年が過ぎた。

仕事の関係で、各地の学校を訪問するため、先生に会う機会も多い。時には校長先生と直接話すことさえある。
若輩者の私と、威厳のある佇まいの校長先生。対面での打ち合わせは今でも緊張するけれど、校長先生の幅広い知見や深い教養はいつも勉強になる。何より、生徒のことを真剣に考えていらっしゃるので、話を聴いていても楽しい。「楽しい」なんて不謹慎かもしれないが、熱意のシャワーとも言うべき「熱さ」はとても心地良いものだ。

そんな校長先生だが、具体的にどんな仕事をしているのか。
知っているようで知らない。知られていない。

知られざる校長先生の仕事を、元リクルート、IT会社を立ち上げた経験を持つ代田昭久氏が丹念に書き上げているのが本書だ。

私が本書を知ったのは、佐賀県武雄市の樋渡市長のブログだ。

(中略)苦労を交えながら校長という仕事を詳細かつ客観的に紹介する。生徒、保護者、教員、教育委員会、地域といった様々な人々からなる「学校」を舞台に日々起こる問題。これらにどのように対処していったのか。本書からは、保護者とも教員とも違った視点で、丁寧に一つ一つ解決を図っていった、「校長」ならではの苦渋、労苦を見て取ることができる。その上で、校長の激務を筆者が「素敵な校長の仕事」(はじめに)と紹介できるのは、5年間に注いだ日々の情熱と愛情、そしてその確かな手応えゆえであろう。本書は、こうした「校長」の日常のほかに「学校現場」といういわばフロンティアに、経営やマネジメントの考え方、手法を導入することで改革を進めていった過程を具体的に紹介する。

マネジメントの考え方を、学校経営に。

各地で民間校長に採用された方は、マネジメントの手法を熟知されており、学校経営においても「抜本的改革」が期待されている。しかしながら民間校長という仕組み自体に否定的な声も少なくない。

岐路に立つ横浜市の民間人校長 4年連続不採用 現場で高評価の一方、根強い慎重論

私自身はロジカルに意思決定できるマネジメントの手法は、どんな分野にも通用するのではないかと、わりと合理的に考えている。
だけど、それが上手くいく事例と、そうでない事例があるのも事実だ。何が違うのだろう、結局本人の資質なのかと漠然と考えていた。

著者が5年間務めた学校は、学力向上や生徒数増加に貢献するなど、目に見えた成果が現れた好例、つまり上手くいった事例である。
樋渡市長もブログに書いていたが、関係者に対して丁寧に接して、問題を1つ1つ解決していったのが何よりの成功要因だろう。マネジメントの手法は、あくまでツールの1つ。それが目的なわけではないということ。

何だか、立場は違えど、今の自分への戒めのようにも感じてしまった。


「お客様のクレームを機会と捉えろ」という顧客視点を持って、保護者に対して接しながら、生徒、保護者、教員など全ての関係者の信頼構築に努めるあたりは、まさに学校の司令塔としてバランス感覚があるなあと感心してしまった。
言葉では簡単だが、なかなかそこまで、一歩引いた視点でクレーム対応には臨めないものだ。

そして、一番印象に残った点。

「戦略とは、何をやらないかを決めることである」。これは、アメリカの経営学者マイケル・ポーターの言葉です。また、マネジメントの神様、ピーター・ドラッカーが経営者の条件で強調しているのは、「優先」順位でなく、「劣後」順位をつけること。つまり、やりたいことは常にあるけれど、経営資源や時間は限られており、成果を挙げるためには、切り捨てていく判断こそが大事なのだ、という教えです。教員の忙しさを解消するには、思い切って何かをやめなければ、と思いました。

その後、具体例が挙げられるわけだが、一番の味方であるはずの副校長と意見の相違が見られた中で、きっちりリーダーシップを取って成果に繋げた一連のプロセスは、見習う点が多いと感じた。

また、学校は成果の「検証」が難しい。
そのあたりのもどかしさは、本書の中にたびたび見られる。
だが、本書全体がロジカルだが、とても温かい表現で描かれているので、「ああ、和田中学校って良い学校なんだなあ」と印象づけられる。

ICT活用など、公立中学校としては先進的な取り組みが多く、研究対象として見学も多いとのことなので、機会を見つけて訪問できればなと思う。

改めてですが、良書でした。

そんな和田中学校のホームページはこちら
しっかり独自ドメインも取っているし、何よりもUIがとても計算されていて、情報が見やすい。ファーストビューで知りたい情報が一覧化されている。

著書では月間17,000人のユニークユーザ(UU)がいるらしい。ウェブに詳しい人なら分かると思うが、たかだか中学校で、これだけのUUがいるとは俄に信じ難い。それほど内外、特に外部からの注目度が高いのであろう。そんな中、スマートフォン対応されていないのは少々残念だが、それもいずれ対応していくだろう。

試しに、自分の出身の中学校のホームページを見てみたが・・・。お世辞にも見やすいとは言えない。というか、トップページ以降のページに「ホームに戻る」リンクくらいあっても良さそうなものだが。でも、一般の公立中学校などそんなもので、ウェブサイトを活用しての情報発信には未だ課題が残る。

この他にも、ウェブサイトを眺めていると残念な点がたくさん浮かんでくる。そう言えば出身中学の校長先生は、僕が野球部在籍時代の監督を務めていた方でした。ということで怒られるような気もしますので笑、本エントリはこの辺で筆を置きます。