直木賞を受賞した朝井リョウの『何者』を読んだ

映画化もされた『桐島、部活やめるってよ』の著者、朝井リョウが直木賞を受賞した。就職活動をテーマにした『何者』という作品。弱冠23歳という若さ、男性最年少の直木賞受賞だという。

朝井リョウ_何者

朝井リョウ_何者

本作は、就職活動に臨む大学生を中心とした物語。主人公・二宮の一人称で語られる。同じく就職活動に臨む仲間たちが、「就活」を通じて、相互に影響を与え合うようになる。あくまで、二宮の視点で話が進んでいく中で、彼らの「表」の顔、「裏」の顔があぶり出されるようになる。そのコントラストは、読者に「痛み」「悲しみ」「憤り」を与える。

読者に「痛み」「悲しみ」「憤り」を与えるということ。作家をはじめ、クリエイティブに関わる人にとって非常に困難な作業である。「ほーら、痛いでしょう?」「ほーら、悲しい話でしょう?」というわけにはいかない。書籍、テレビ、映画、インターネットなど様々な情報が氾濫する中で、彼らは僕らの感情を、何とか弄ぼうと躍起になる。

情報が氾濫する中で、既に多くの手段が使われてきた。常套手段だったものがどんどん使い古されて、「ありきたり」になっていく。作家にとって「ありきたり」と思われることほど辛いことはないだろう。そういった視点で考えると、朝井が本作でとったアプローチは、正攻法でありつつ、新しいものだ。

一言で表すなら、究極のチェンジ・オブ・ペース。

良い意味で、ラストを飾るシーンまでは、読むのがキツかった。小説に出てくるTwitter、Facebook、就活などが、僕としては馴染みのあるものばかりだった。そういった意味で、何とかページを繰り続けることができた。

が、万人がラストシーンまで簡単に読み進められるかと言えば、そうではないだろう。

それでも僕は、全ての読者に、最後のページまで文字を追ってほしいと思う。

ラストシーンでは、帯に書かれている「あんた、ほんとは私のこと、笑ってるんでしょ」という言葉が生き霊のように登場し、何度も何度も執拗にまとわりつく。ぐりぐりと心を捩じ上げ、気付けば逆転負けを喫することになっている。1−0で勝つだろうと思ったら、1−3で負けてしまった、“あの”ワールドカップのように。

この小説は、まるで映画化を望んでいるような作品だ。しかも大ヒットを期待するのではなく、気鋭の監督に対して、実験作として作られることを望んでいるような。

その辺が、映像作品を手軽に楽しめるようになった、20代という「世代」感を感じさせる。

また、直木賞の受賞会見で朝井は、「30歳のご自身、30歳のときの小説を想像できるか?」という問いに対して、

「できないですよね、なかなか。うん、でも16歳のときに23歳のときの自分が想像できなかったように、今から7年後の30歳というのは想像できないです。でも、書き続けていたら良いなと思っています」

と率直な感想を述べている。社会人一年目という顔も持つ彼が、これからどんな小説を書いていくのか、とても楽しみだ。